モャッパ!

生きにくいよを生きやすく

「この世界の片隅に」感想(ネタバレなし)

すっかり放置気味だったので久々に!

今年は多分にもれず、「シン・ゴジラ」→「君の名は」→「この世界の片隅に」と話題作を覗きに行きました。それぞれ思うところはありましたが、中でもこりゃ何か書かねばなならんわ……!という気にさせてくれたのは「この世界の片隅に」。

 

戦争ものかー、なんでそんなに評判いいのかな?くらいの気持ちで見に行った「この世界の片隅に」。

DVDで片渕監督の前作「マイマイ新子と千年の魔法」を見ていたので、とりあえず牧歌的な話なのだろうなと思っていたら、まさにその通り。お話はしずかにやさしくとんとんすすみます。

そして気づけば見終わっていました。

126分という結構な長さの映画。それなのに、腰いたいなぁとか、後半トイレ行きたくなったらどうしようとか、買ったお茶飲まなきゃ、とか思ったりする暇は一切なく、終わっていました。

はっと夢から覚めたような気分。多分、見た人はわかってくれるんじゃないかな。

 

 

灯りがついてしばらく、余韻に浸ってぼーっとしていました(真ん中の席で、急いで立つ必要がなかったので)。

するとなにやら、出て行くお客さんの顔がよく目に入る。

そしてなぜか、その人たちをものすごく近しく感じる。知らないおじさんおばさんやカップルや大学生に対する見方が明らかに変わっている。他人に見えなくなっている。

すごく不思議な体験でした。でもこの映画を見たのならば、必然的な体験だなとも思いました。

この世界の片隅に」は普通の人の話です。主人公のすずさんも、その周りの人も、みんないたって普通。能力や容姿や性格に多少の違いはあれど、その時代やその時代のルールの中でそれぞれ普通に幸せになるため生きようとしている。

大事な人は失いたくないし、美味しいものを食べたいし、好きな人とはキスをしたいし、苦しくてもなんとか笑って生きていたい。死ぬのは怖い。根っこは全然変わっていない。今も昔も。

だからか、ごく自然に周りの人たちに対して、「ああこの人たちと私はおんなじなんだなぁ」「みんなみんなここに生きててよかったなぁ」と、うっすら笑顔になれました。うーん、まるでベタな言い回ししかできなくてもどかしい……!でも同じような体験をした人はきっといるはず……!

 

 

 

マイマイ新子」を見た時にも思ったことなのですが、片渕監督は「過去と現在をつなぐ」ことをすごく大切にされているのだなと思いました。過去を「過去の物語」にしない、とでもいうのかな。今と過去を地続きにしてくれる。

広い縁側のついた家に近いかもしれない。見る人がすーっと入り込めるようになっていて、気づけばいつの間にか奥の奥まで入っていて、「ああ実家みたいだな」ととっぷり浸かっている。

「押し付けがましくないからいい」という意見はまさにその通りですね。「物語の中に導かれる」感覚がとっても心地よかったです。こんな映画体験あるんだ!とびっくりびっくり。

 

月並な結論ですが、文句なしに素晴らしい映画でした!迷わず映画館に!

しかしどういうことをしたら、こんな風に人の心に寄り添った映画が作れるんだろう?